ROYAL NAUGHT

57点のおじさんはダイエットを始めた

【書評】東南アジアで働く/横山和子

これからを生きる若者に向けて書かれた、新しい働き方の提案 

お手本にしたい。

それがこの本を手に取った動機である。

1年以内など、そこまで近い将来の話ではないが海外移住の希望とイメージがわたしにはある。
とりわけ、東南アジアがよいと考えているところだったが、詳しい知識や情報は持ちあわせていなかったため、すでに東南アジアで働く諸先輩がたへのインタビューや実情が載っていたり、東南アジアを中心とした『新興国』の経済状況など各種資料が載っている本書は、タイトルどおり『東南アジアで働』きたい人にはぴったりの本に仕上がっている。 

 

まず最初は東南アジアの諸国をふくむ『新興国』やわれわれ日本など『先進国』などの経済状況や成長率などを教えてくれる。

書きあじも優しい文章で、いっけん内容は難しくとも、読みやすく感じるだろう。

 

その後、タイに3名、香港に2名、カンボジアに4名いる、すでに東南アジアで起業し働いている9名の先輩にスポットライトをあてる。

悲喜こもごもの半生、英断からの栄転などなど、ぎゅっと短めに濃縮された各人の人生を並走することのできるインタビュー。
彼らの生きかたから感じとること、学ぶことは多い。感じ入るところの読み手によりさまざまだろう。

 

最後は、インタビューした成功起業家9名の特徴や共通点を研究し、、起業に必要な条件やマインドなどを整理している。

 

日本のGDP成長率が下降を見せている点も本書で確認できる。

ひらたくいえば、日本の成長がストップしたのだ。

同じ分類の『成熟先進国』である香港に2005年から2015年にかけての成長率で抜かれてしまっている。

いま、日本の企業が東南アジアの事業開拓に奮闘している。

国内だけでなく、海外を拠点にして働く社員が増えてきてもなんら不思議ではない。

昔は『長期雇用』で成り立っていた日本の雇用システムも今は崩壊。

いよいよ日本にも、外国で一般的な『成果主義型経営』へのシフトチェンジの流れが訪れているわけだから、いつまでも会社におんぶにだっこの状態では安心していられない時代になっている。 

 

「年金ちゃんともらえるんか?」という心配と同等レベルに「将来仕事あるんか?」という懸念も生まれかねない今後20年の、読めない展開。

参考程度に『東南アジアで働く』こともちょっと情報収集してみてはいかがだろうか。
本書はその入門にうってつけだ。 

本の情報 

東南アジアで働く (なるにはBOOKS 補巻)

  東南アジアで働く (なるにはBOOKS 補巻)

 

著者

横山和子

出版社

ぺりかん社

発売日

2017/12/04

目次

1章:東南アジアを知ろう
 日本経済の成長とアジア
 東南アジアの新興国
 新興国でのニーズ

2章:ドキュメント 新たな市場を発見!
 タイ 市場調査会社の経営者
 タイ 古式スパ・マッサージ店の経営者
 タイ 日本製健康グッズ販売会社の経営者
 香港 照明デザイン会社の経営者
 香港 医療サービス会社の経営者

3章:社会の経済発展を支援!
 カンボジア デザイン会社の経営者
 カンボジア パン屋さんの経営者
 カンボジア 商品の企画開発・販売会社の経営者
 カンボジア 土地開発や人材開発事業会社の経営者

4章:東南アジアで働くために
 働く前に考えてみよう
 起業家の特徴と不可欠要素
 成功するための心構え
 起業の実際
 生活と収入
 これからのアジア

メモしておきたい

本書にある、世界各国の経済成長状況を8つに分類した表や東南アジア諸国の経済成長率など、興味深い表が掲載されていたので、今後のためにも引用しておきたい。

世界各国の8分類該当国例

分類名 該当する国の例
(小規模)低開発国 ジャマイカ、ハイチ、中央アフリカ、ギニア、ブルガリア、南アフリカなど
(大規模)低開発国 メキシコ、ブラジル、ロシア、イランなど
(小規模)新興国 コートジボワール、ジンバブエ、バングラデシュ、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、ラオス、ベトナム、カンボジア、エジプト、モロッコ、コロンビアなど
(大規模)新興国 タイ、中国、インド、インドネシアなど
(小規模)成長先進国 チリ、シンガポール、バーレーン、イスラエル、オマーン、アラブ首長国連邦、カタール、アイルランドなど
(大規模)成長先進国 トルコ、オーストラリア、韓国、サウジアラビアなど
(小規模)成熟先進国 香港、ポルトガル、ハンガリーなど
(大規模)成熟先進国 アルゼンチン、ポーランド、アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スイスなど

太字はアジアの国。

経済成長率と一人当たりのGDP水準を世界平均と比べて、かつ経済規模の大小を『大規模・小規模』で分類。

経済成長率もGDPも世界平均より低い…低開発国
GDPが世界平均より高く、経済成長率は世界平均より低い…成熟先進国
GDPが世界平均より高く、経済成長率も世界平均より高い…成長先進国
GDPが世界平均より低く、経済成長率は世界平均より高い…新興国

アジアの新興国における一人当たりのGDP比較と増加率(日本と香港は参考)

国名 GDP2005年 GDP2015年 増加率
マレーシア 5,594 9,644 1.7倍
中国 1,753 8,069 4.6倍
タイ 2,894 5,815 2.0倍
インドネシア 1,261 3,336 2.6倍
フィリピン 1,195 2,878 2.4倍
ラオス 475 2,159 4.5倍
ベトナム 700 2,107 3.0倍
インド 707 1,613 2.3倍
ミャンマー 247 1,195 4.9倍
カンボジア 474 1,163 2.5倍
日本 37,218 34,474 0.9倍
香港 26,650 42,351 1.6倍

※GDPの単位はドル

アジア新興国の面積・人口と増加率(日本と香港は参考)

国名 面積 人口2005年 人口2015年 増加率
中国 9,597 1,303.7 1,371.2 1.05倍
インド 3,287 1,144.1 1,309.1 1.14倍
インドネシア 1,905 226.7 258.1 1.14倍
タイ 513 65.4 68.7 1.05倍
マレーシア 330 25.7 30.1 1.17倍
ベトナム 331 82.4 91.7 1.11倍
フィリピン 300 86.3 101.7 1.18倍
ミャンマー 677 48.5 52.4 1.08倍
カンボジア 181 13.2 15.6 1.18倍
ラオス 237 5.8 6.6 1.14倍
日本 378 127.7 127.1 0.99倍
香港 1 6.8 7.3 1.07倍

日本企業のアジアへの進出

本書からおさえておきたい情報として引用。

ファミリーマートは2010年にアジアへの店舗展開を開始し、2017年8月末現在、中国に2071店舗、タイに1135店舗、ベトナムに141店舗出店しています。

セブンイレブンは2008年に中国の北京で出店を開始し、2017年8月末現在、中国に2377店舗、タイに1万7店舗、マレーシアに2186店舗、フィリピンに2087店舗とその店舗網を急速に拡大しています。

また、吉野家、ワタミ、モスバーガーなどの外食チェーンもアジア各国に店舗を広げています。

みなさんは、アジアの新興国で生活するのは大変だ、と考えるかもしれませんが、バンコクには伊勢丹や東急、香港にはそごうなどの百貨店(デパート)があり、プノンペンには、イオンモールがあります。

カンボジアの暗い歴史

カンボジアは1970年代後半のクメール・ルージュ政権時代と1980年代に続いた内戦時代に同国人同士が殺りくをくり返した暗い歴史をもっています。

クメール・ルージュ政権時代には知識人を中心に多くのカンボジア人が虐殺され、あるいは餓死しました。

正確な数字は特定できませんが、当時の人口の20~40%に当たる100万人から200万人の国民が死亡したといわれています。 

平和な国、日本では考えられないような悲惨な歴史。

むかし、とても苦しい状況にあった国も、世界各国からの支援が受けて復興。今ではぐんぐんと経済成長を進めている。

ベイス・オブ・ザ・ピラミッド

base of the pyramid、これはBOPと略されることもあり、『未開拓の市場』を推し測るものである。

簡単に解説すると、いわゆる年間所得が3000ドル以下の人々が世界に40億人おり、全人口の72%を占めていて、その層の市場規模はおよそ5兆ドルとされている。

このベイスの部分にこれからの市場・新たな顧客・ビジネスパートナーが眠っているとして、開拓が進められている。