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57点のおじさんはダイエットを始めた

【書評】ネトゲ廃人/芦崎治

ネトゲはひとつの経済であり出会い系でもある

ネトゲ廃人となった人あるいはその家庭16例の、ネットゲームにまつわるノンフィクションな出来事をインタビューした内容。

「素敵な恋人ができました」「自分がいなくちゃみんなが困る、必要とされている実感があった」などなどネトゲに前向きな意見もあることにはある。

ただし、タイトル通りいちどはネトゲ廃人となった人々からのメッセージ、その大半はネットゲームに警鐘を鳴らす内容だ。

恋沙汰も生まれれば、家庭問題への発展などもある。

ネットゲーム世界への依存により、リアル世界の用事や関係がおろそかになり、リアルで崩壊していく様子が本人のくちから生々しく語られる。

まるで読み手がインタビュアーになって話を聞いているかのような感覚に没入できると思われる。

 

なかでも危惧されるのは若年層がネットゲームにハマることだ。

中学生当時にネットゲームにハマり、不登校となり、その他おとなのプレーヤーにまじって日々ゲームに傾倒する。

リアルマネートレード(RMT)といって、ネットゲーム内の貴重で高価なアイテムが欲しいためにネットゲーム内通貨が必要となるが、そのゲーム内通貨を現実のカネで売るという商売行為は有名。

その作法やいろはを、年上ゲーマーから教わる高校生というケースもあった。

ただし、

専門学校に入って一番困ったのは、『高校生時代、何やっていた?』と聞かれることですね。『ネットゲームです』とは、胸を張って言いづらいんですよ

こうした当事者の生の後悔も見える。

 

またネットゲームにはオフ会というものがあり、ゲーム上で仲良くなったチームやメンバーたちが、今度はリアルで会ってみようということでグリーティングを開催する。

ゲーム内では姿も名前も、年齢すらも非公開のままつながりあうことができる。

そんな仲間が集まるのだから年も仕事もまったく違う人との出会いの場となる。

そういったなかで、年上の慣れた男性が、恋愛に不慣れな若い女性を巧みに口説いている姿が散見されるらしい。

 

興味深いのは、ゲームの運営会社のオイシさ。

ゲーム運営会社はつまり国家・政府のようなものであって、延々とゲーム内通貨を発行することができる。

通貨が増えれば増えるほど、ゲームのなかで物価は上がる(インフレが起こる)。

ゲーム内通貨が欲しくてRMTをくり返す人もいれば、レアなアイテムがあたる運営の発行するクジ(ガチャ)を購入する人もいる。

ようは、ネトゲはやればやるほど運営が儲かるようにできているという話だ。 

 

失うものは『時間と金』。

そういったかつてのネトゲ廃人の諸先輩方の警告を胸に刻みつつ、ゲーマーのわたしは最近発売されたばかりのモンハンワールドへ、今日も颯爽とログインするのであった。

※ようは節度をわきまえて、楽しく正しく遊ぼうね!ということなのだ 

本の情報

ネトゲ廃人 (新潮文庫)

  ネトゲ廃人 (新潮文庫)

 

目次

第1章:ネットゲームに日々を捧げた女神たち

第2章:セカンドライフで人生をリセット

第3章:ゲームで愛し合いリアルで同棲

第4章:ゲームに救われ、ゲームに閉じこもる

第5章:親不在の寂しさからハードゲーマーへ

第6章:デイトレーダーがはまったRPG

第7章:キャラクター同士で、本気の恋愛 

第8章:ネトゲ家族の崩壊

第9章:オンラインゲーム大国、韓国の憂鬱

第10章:急増する小学生のログイン

第11章:ネトゲ廃人たちの絆